日蝕の時の太陽コロナ The Sun's corona in eclipse |
月が太陽の姿をすっかり隠してしまう皆既日蝕の時には、
暗くなった太陽の周りが輝いて見えます。
この輝いてみえるものがコロナ、つまり太陽の最も外側の大気です。 During a total eclipse of the Sun, when for a few minutes the Moon completely covers the Sun's face, a glow appears around the darkened Sun--the solar corona, the Sun's outermost atmosphere. |
日蝕の時にコロナ中に見られるさまざまな構造は、
その形が磁場によって決まっていることを教えてくれます。
これより、コロナが、磁場を感じるプラズマでできているらしいこともわかります。
たとえば、太陽の北極や南極域から上がってくる短い「プルーム」という構造は、
棒磁石のN極やS極から出てくる磁力線によく似ています。
よって、太陽には、黒点の強い磁場だけでなく、
地球と同じような大規模な磁場もあるということがわかります。 Structures visible in the corona at such times suggest that they are shaped by magnetic fields, and therefore, that the corona consists of plasma. For instance, short "plumes" rising from the polar regions of the Sun look very much like field lines coming out of the end of a bar magnet, and they therefore suggest that the Sun, in addition to the intense fields of sunspots, also has a global magnetic field like the Earth's. | 太陽表面のアーチ Arches above the Sun's surface |
黒点の上空のコロナの構造は、やはり磁力線に沿った
アーチのような馬蹄形の輪郭をしていることがよくあります。
そのアーチの頂上あたりから、
まるで飴菓子を引っ張って伸ばしたような長い筋状のものが、
太陽半径かそれより遠くの距離まで伸びていることもあります。
あたかも、何か(実は太陽風)がアーチの頂上から宇宙空間へと
物質を引っ張り出して行くように見えます。
天文学者はこの構造を「ヘルメット(兜型の)ストリーマー(吹き流し)」
と呼んでいます。西洋の騎士がかぶっていた、頭頂部のとがった兜(かぶと)に形が似ているためです。
(1918年ころまでドイツ兵などがかぶっていたヘルメットもそんな形なのだそうです。)
高温のコロナ
コロナの最大の特徴は、温度が高いことです。
これはスウェーデンの天文学者Bengt Edlenが
コロナの光の研究の末、1942年に導き出した結論です。
コロナの光のほとんどは、コロナのダスト(塵)で散乱された太陽光にすぎませんでしたが、
ごく限られた色の範囲ながら、コロナ自身が出している光もありました。
(この限られた色の範囲のことを「スペクトル線」と呼びます。)
スペクトルの色は、光を出している原子の種類ごとに違います。
太陽光のスペクトル線の観測は19世紀に始まっていましたが、
コロナのスペクトル線のうちのいくつかは、当時
地球上で知られていたどの物質の出すスペクトル光とも違っていました。
そこでこの光を出しているのは、新種の未知の化学物質であろうと考えられ、
ギリシア語で「太陽」をあらわす言葉「ヘリオス」から、
「ヘリウム」と名づけられました。
Norman Ramseyが地球上にもヘリウムが存在することを発見したのは、
後の1985年のことでした。 |
コロナの観測は、これらX線、紫外線、可視光線の波長域で行われてきました。
観測を行ったのは、宇宙ステーションスカイラブや、もっと最近では
図に示すような写真を撮影した日本の衛星
「ようこう」などです。これらの写真で見ると、太陽は全然平らに見えません。
太陽黒点の周りで最も明るく、黒点上のアーチ型の磁力線は
太陽風がエネルギーを外へ持ち去ってコロナを冷やすのを妨げています。
黒点の間にあるコロナルホールは、磁力線が宇宙空間まで伸びて太陽風が
容易に逃げ出すことのできる領域ですが、ずっと暗く見えます。 The corona has been observed in these wavelengths by, among others, the space station Skylab in 1973-4 and more recently by the Japanese spacecraft Yohkoh, which provided the picture shown below. The corona in such pictures appears quite uneven. It is brightest near sunspots, whose arched field lines apparently hamper the outflow of solar wind which carries away energy and helps cool the corona. It is darker in "coronal holes" in between, where field lines apparently extend out to distant space, making it easier for the solar wind to escape. |
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太陽のX線観測についてより詳しいことは、 姉妹サイト "「占星者から宇宙船まで」From Stargazers to Starships"の中の記事 "「新しい光で太陽を見る」Seeing the Sun in a New Light"に出ています。 A more detailed discussion of solar observations in x-rays, titled "Seeing the Sun in a New Light," can be found in the sister-site "From Stargazers to Starships." |
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原著者: Dr. David P.
Stern
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Last updated:October 12, 2002