東北工業大学 工学部情報通信工学科 中川研究室


ラプラス変換とたたみこみ デュアメルの重畳定理

電気回路の問題より続く
合成法則より続く
重畳定理は、インパルス応答w(t)さえわかれば、どんな入力E(t) に対する応答もわかる (Eとwの畳み込みになる )という定理です。
ラプラス変換を使って、電気回路の応答を調べる問題などによく使われます。例えばこれ

インダクタンスLのコイル、抵抗値Rの抵抗、電気容量Cのコンデンサ を電源に直列につなぎ、 時刻 t=0 にスイッチを入れた。これ以降の電流 i(t) を求めよ


たたみこみ

ラプラス変換
出だしは
いつもと同じ
1.電圧降下の合計が 電源の起電力E(t)と等しいので
L di(t)/dt + R i(t) + q(t)/C = E(t)


2.両辺をラプラス変換する
L( i ' ) + R( i ) + (1/C)( q ) = ( E )


3.ラプラス変換の微分法則 を使う
-Li(0) + Ls( i ) + R( i ) + (1/C)( q ) = ( E )
微分法則
( y’ ) =
- y(0) + s ( y )

4.電荷q(t)と電流i(t)の関係を考え
dq(t)/dt = i(t)  
両辺をラプラス変換して 左辺に微分法則を使い、
-q(0) + s( q ) = ( i )


5.( i )だけの式にする
( q ) の式を元の方程式に代入し ( i )の項を左辺に、それ以外を右辺にまとめて
( Ls + R + 1/Cs ) ( i )
         = ( E ) + Li(0) - q(0)/Cs

( Ls + R + 1/Cs )は
「特性関数」 又は
「インピーダンス」
ここがポイント
6.「応答」の場合は、初期条件がすべて0
すなわち i(0) = 0, q(0)=0 という約束なので
( Ls + R + 1/Cs ) ( i ) = ( E )
応答 i(t)は
      ( i ) =( Ls + R + 1/Cs )-1 ( E )

電源Eが単位インパルスσ(t)の場合の応答をw(t)とすると
      ( w ) =( Ls + R + 1/Cs )-1 ( σ(t) )
( σ(t) ) = 1 なので
      ( w ) =( Ls + R + 1/Cs )-1

これを電源E の場合の応答に代入すると
      ( i ) = ( w ) ( E )
単位インパルス
インパルス応答

7.ラプラス変換の合成法則 ( w ) ( E )= ( w*E ) より
      ( i ) =( w * E )

8.両辺の( )を同時にはずす
        i = w * E
        i = E * w と書いても同じ
( f )( g )は
( f g )ではなく
( f * g )
* は たたみこみ

w*E = E*w
重畳定理
この意味は!
電源E(t) に対する応答i(t) は、
瞬間瞬間の電源E(t)入力とインパルス応答w(t) の
「たたみこみ」 f * w になっている
これがデュアメルの重畳定理です。

時間変化する入力に対する出力は、 入力をインパルスの連続と考えて、 その瞬間瞬間に対する応答を 積み重ねただけ、という、 なんかすごく当たり前のような、 あっけないような定理です。

でもこれがあると、その回路の インパルス応答w(t)さえわかれば、 どんな入力E(t) に対する応答もわかるわけですから( i = E*w )、 応用の場は広いですよね。


ちょうじょう
「重畳」
と読みます

線形ならでは
ですね


中川研HOME